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アル=バンビーノ!

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※二次創作注意報① (ジャンル:コナン)

突発的に書いてしまった
KID×コナンSS。

ホモではありませんが嫌いな人注意。
いや、だってねえ、一応健全なレビューサイト目指してるし。

内容は組織がらみでピンチになったコナンを気まぐれのように助けにきたKID。
みたいな話で。シリアス。

 

 

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二次創作小説

「今宵は貴方を盗みに参りました、名探偵」
そう優雅な礼をして微笑んだのは、夜空をわって舞い降りた白い怪盗だった。


――シャーリー・テンプル(子供と大人と)―


コナンはその小さなからだを賢明に叱咤し、コンクリートの階段を駆け上がる。
バブル期に建設が始まったそのビルは、そのまま不況の波に呑まれ放置され、今はただ取り壊しを待つばかりの物騒極まりない建物になっていた。
ところどころ床が腐り、むき出しの鉄筋の天井は今にも落ちてきそうだ。
しかも。

「はあっ・・・・・・は・・・あ。やっと、まいたぜ・・・・・・」

招かれざる客人がしこたま集まるのは必須のことで。
容赦なく打ち込んでくるライフルをギリギリのところでかわし、階段を駆け上がること10階分。
崩れかけの鉄材を踏まないように廊下を全速力で抜けるのは至難の業だった。しかももう、体力的にも限界だ。
だんだん上へと追い詰められているのは明らか。
もうどこへも逃げ場はない。

(いったい何人いやがるんだ!!)

彼は、自分をねらう組織に追われていたのだ。

「いたぞ!!追え!!!!」

追跡者達の声が飛び交う。
その振動でビル自体がくずれそうになるほどの怒声だった。

(そう簡単に捕まってたまるかよ)

珠のような汗を額に浮かべ、大きく肩で息をつく。
階段の下から、もう片方端の廊下から、ブラックスーツの男達が追いかけてくる。
逃げ場はもう、屋上しかなかった。

(こうなったらどこか高い位置・・・・・・階段の上から何か蹴り飛ばして・・・・・・退路を作るしか・・・・・・)

しかしそれが出来るならとっくにそうしている。
相手はずいぶん正確なスナイパーのようで、一瞬でも動きを止めればそこを射抜かれる。

「くそ!!」

もう逃げ場は屋上しかない。
しかし、屋上にあがればもう逃げ場はない。
目の前に立ちふさがる階段は、まさしく死刑台への13階段のように思えた。

(ああ、もう・・・本当にこんなところでおわっちまうのか・・・・・・?)

派手な音を立てて、扉を開く。
街の夜景は遙か下方。
近隣に高いビルはなく、飛び移って逃げることも出来ない。
明かりもともらない廃墟ビルは闇にぽっかりと呑まれていた。
風がびゅうと吹き。
せめてどこか身を隠せるところはと、辺りを見渡したその時だった。

 

「ごきげんよう、名探偵」

 

真っ白な大きな鳥が目の前に舞い降りたように見えた。
0.01%も予期していなかった人物の登場に、さすがのコナンも目を見開く。

「な、なんで・・・・・・・・・・」

ふいに過去の邂逅がフラッシュバックする。
初めて一対一で対峙したときもこのようなビルの屋上だった。
それから何度か、・・・・・・時には船の上、山奥の館や、そして。
こんな屋上で。
邂逅はいつも月を背負う夜空。
悠然と空を舞う白い魔術師。
それがなぜここに。
驚くコナンに微笑みかけると、彼は優雅に礼をした。

「今宵は貴方を盗みに参りました、名探偵」

「な、」

その意味を問いただそうとした時、背後のドアが勢いよく開いた。
コナンの足を正確に狙うトカレフがコンクリートを削る派手な音と、空薬莢の落ちる小気味よい金属音が鳴り響く。

「逃がすな、殺ってもいい!!!」

男達は既にデットオアアライブ、生死問わずの姿勢に変えたらしい。

(まじかよ)

今まで足下を狙っていた様々な小型自動拳銃の銃口が一斉に位置を高くした。

「名探偵、早くこちらに」

危なっかしいフェンスの上に立ち、雨のような銃弾をひらりとかわす魔術師に手を差しのべられる。
その手をつかむのはしゃくだったが。

「早く」

指先が触れあうのと同時に上半身ごとひきあげられた。

「しっかりつかまっていてください」

怪盗は空いている右手でトランプ銃を撃ち、スナイパーの手から拳銃を器用にはじき落とす。

「か、怪盗キッドだと?! 奴も撃ち殺せ!!」

追跡者たちもいまさ気づいたようにら妙な侵入者に銃口をむけた。

「少々イレギュラーな、しかし大切な仕事でね」

キッドは気障なしぐさで片手をあげるとそのまま抱きかかえたままのコナンの目を軽く覆い。
キッドの意図をつかんだコナンもまたおとなしく目をつむった。
指のすきまからもれる銀色の閃光が堅く閉ざしたまぶたを透過してきらめく。
轟音が鳴り響き、怪盗と探偵は夜空に浮かんだ。

月明かりの元での優雅な空中遊泳。

「大丈夫でしたか、名探偵?」

心配気に顔をのぞき込まれるのは妙に不愉快だったが。

「あ、ああ。ってなんでお前がこんなところにいんだよ?」

今日はKIDの予告日だったか?!と続けようとした言葉は遮られた。

「ソースは秘密です。まあ、盗聴にはお気をつけて、ね」

(盗聴だと~~?!)

言葉にならない声は空気になって口から出ていく。
その様子をいかにも面白いと言った風情でくすくすと笑う気障な怪盗。
モノクルで隠したポーカーフェイス。
しかしその中にある暖かい口調をコナンは確かに感じとった。

「どーでもいいけど、その言葉使いやめろ。ここにはギャラリーはいないんだ。背中が痒くなる」

警察の警備の裏をかいたキッドと、独自の推理で居場所を突き止めるコナン。
二人が一対一で対峙するときは、キッドはその慇懃無礼な仮面を脱いでいた。
今日はそれがないから違和感を持ったのだ。

「いいんですよ、今宵私に盗まれる憐れな獲物は貴方ですから・・・・・・ああ、ごめんなさい、そんなに暴れないで。落ちてしまうよ」

芝居がかった台詞回しは後半忍び笑いに変わる。

「て、め・・・・・・もういい、助かったんだから、さっさとどこかにおろせよ!」

雲一つ無い夜空。
都会の空に星は浮かばない代わりにネオンが代わりに地上に輝く。
その一つを指さしたキッドはそこを目的地に定めたようだ。
ふわりとマントをなびかせ着地する。
屋上と言うには少し違和感のある、人工の明かりに輝く大きな看板の下。
フェンスもないその場所は普段は人の出入りがなさそうに思えた。
風の音と遙か下を流れる車の音が混じり合う。


「あーあ。せっかく助けてやったのにそれはないんじゃねーの?」


コナンを降ろしたあと、自分も隣に座り、キッドはやれやれと肩をすくめた。
文字通り骨折り損にならなくてよかったとぼやく怪盗を横目で見ながら、しかしそのいつもどうりに戻った口調にコナンはなぜだかほっとしてしまう。

「腕、弾丸がかすったけど・・・・・・これくらいなんでもねーよ。まあ、なんだ、その・・・・・・助かったよ」

こいつがいなかったら今頃蜂の巣になってあの世行きだったのは間違いがない、が認めたくはなかった。

「お?名探偵にしてはずいぶん素直じゃねーの」

怪盗と探偵が隣に並ぶ妙な居心地の悪さと、ややもすればその高揚感に目眩を覚えながら、探偵は慎重に言葉を選んだ。

「・・・・・・次、またお前が予告現場に現れた時に別に容赦したりはしないからな」

「それでこそ俺をなんども追い詰めた名探偵だよ!」

弾むような声が頭上から聞こえて、コナンは思わず上目で睨んだ。

(・・・え?)

さぞいつもの口元だけで笑うシニカルな、人を喰ったような笑みだと思って見上げたコナンは絶句した。
モノクルに隠れていない左の瞳は優しげで、本当に心から笑っているように見えたのだ。
見てはいけない物を盗み見したような罪悪感を感じ、ふいと顔をそむける。

「盗聴してたのは・・・・・・あれだろ。中森警部が次のキッドの事件を毛利のおっちゃんに依頼したからだろ。で、俺がまた関わるのか気になって盗聴器を仕掛けた・・・・・・そんなとこだろ」

「おっと。ご明察で」

相変わらずふざけたやつだ。
そのふざけた態度に苛々したのか。
つい感情的になってしまった。

「だからって・・・・・・なんで。わざわざ危険を冒して助けに来たんだよ!!あれはオレの・・・・・・オレの事件だ!!お前に助けてもらう義理なんてねーよ!!」

こいつがいなければ間違いなく死んでいた。
組織を追い詰めることも真相を白日の下にさらすことも出来ずに、無念に。
しかしそれ以上に、普段めったに関わることのない怪盗にむざむざ助けられてしまった無力な自分に怒りが湧いた。
しかも最初から関係は対等でなかったのだ。
自分は一方的に正体を知られている。
キッドの正体はまったくつかめてないのに。
自分の中の感情を鎮めるように、大きく息を吐く。

「どこまで、知っているんだ」

言葉を句切るようにゆっくりと言う。

「さーねー」

キッドは「何を?」とは聞かなかった。
ただ、教えてやんねーとばかりにあらぬ方向をを見つめた。
場を支配する長い沈黙に耐えられなくなったころ。

「オレと似たような境遇ってことくらい?」

おどけたようにキッドが言った。

「・・・・・・は?」

何を言い出すんだこの怪盗は。
今日なんどこの魔術師の言葉に面くらっただろう。
翻弄されてばかりだ、悔しいことに。

「オレの親父は、ある組織に殺された。命の石パンドラを狙う組織に。似てるだろ?」

「なんだよ、その命の石って」

組織の話も気になるがそれよりも。

「ビッグジュエルの中に眠る赤い石。それを手に入れれば永遠の命がオマケについてくるってわけ」

シルクハットとモノクルの下で微笑む顔は妙に悲しそうに見えた。

「似てるだろ、おまえの体の時を操作した薬に。それを作る組織にさ」

そのあとは頭脳明晰なコナンでなくても、推理せずとも気づいてしまった。
その交差する運命の軌跡に。

「だから、助けちまったのかもな」

いつものキザな言い方でもなく、バカにしたような軽口でもない。
それは自分と同じ年の普通の高校生のような声。
複雑な思いでキッドを見上げる。
正体不明の国際的指名犯の素顔がかいま見えた気がした。
それはあまりにも普通の少年の声で。

(ちょっとオレの声に似てるかな?)

ふと気づいた、確かめようのないかすかな事実。

それと同時に自分とキッドは何も違わないんだと思わされた。

自分はたまたま探偵で、こいつは怪盗で。
でも暗いモノを追い求めてるのは何も変わらない。
たまたま立ち位置が違うだけ。
本質は同じだった。
いつだったかブルーワンダーの事件の時にこいつに言われたセリフを思い出す。


――空の青と海の青が同じように俺たちはもともとは同じなんだ


あの時はそんなぬけぬけとした言いぐさに耳を貸す気はなかったけれど。
だからお前は怪盗を続けるのか?
その石を手に入れるために。
父親を殺した組織に復讐するために。
言いかけてコナンはある結論にたどり着いてしまった。
なぜキッドがいちいち予告状を犯行前に送り、華麗なパフォーマンスで人目を集めるのか。
それこそ盗賊ならもっとこそこそしていれば良いのに。

「おまえ、まさか自分を」

思わず声のトーンが上がる。

(自分を餌にしてるつもりか)

そう続けようとした言葉は、マジックをするかのようにすっと伸ばしたキッドの手に遮られた。
その手は隣に座るコナンを抱き寄せ、そっと唇を耳元に寄せる。

「おい・・・・・・キッド?」

ただでさえまともとは言えない怪盗の、さらに不審な行動にコナンが思わず抗議の声をあげる。
キッドの吐息が耳元をくすぐった。

 


「それ以上の余計な詮索は無用に願おう、名探偵」

 

それは何者も寄せ付けない、絶対零度の低い声。

 


「キッド・・・・・・・・・・・・!!!!」

驚いて顔を上げた時には、白い怪盗の姿は既に煙のように消え失せたあとだった。

(なんなんだよ・・・・・・)

今ここに人がいたのが信じられない静寂。
自分以外の人がいたという唯一の証拠は肩に残ったわずかなぬくもり。
それすらも丑三つ時の秋風にかき消されてしまった。

 

残されたのはどこぞのペテン師と違って翼を持たない自分と。
そして突きつけられた重要な事実。

 

(ていうかキッドのやろう・・・・・・降りられねぇじゃねーか・・・・・・!!!)

 

自分は探偵であいつは怪盗で。
もしも本当に自分たちの根本が同じ存在だというのなら。
まったく同じものなら、決して交わることはないのだ。
ある事実を挟んで対峙するその存在は常に平行線を描くだけ。
もしその平行線が交わることなどあったとしたら
――あったとしたら、それは説明がつかないことに違いない。

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アル=バンビーノ!

ごった煮お雑煮レビューサイト。お気に入りはハルヒ・ラノベ・ジャンプ・801・たまに創作二次創作

プロフィール

HN:
アル。本名の一字。
年齢:
37
性別:
女性
誕生日:
1986/12/24
職業:
企業秘密。あと早稲田大学学生。なりたいものはラノベ作家
趣味:
読書、創作
自己紹介:
コトノハやってみた


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